study

熊谷晋一郎さんのインタビューについて

岩永直子さんによる熊谷晋一郎さんへの一連のインタビューを通して読んだ。 もちろん話の出発点に置かれているのは、杉田水脈さんの『新潮45』への寄稿原稿への批判である。けれども本当の焦点に置かれているのは、人間の価値を生産性によって評価する価値・…

『みんなの当事者研究』出版記念シンポジウム

『みんなの当事者研究』出版記念シンポジウムに参加してきました(http://kongoshuppan.co.jp/dm/tojisha18.html)。僕の報告は、前半は言いっぱなし聞きぱなしについて、後半はトラブル経験をめぐるアスペクト転換(トラブルを捉える枠組みの転換)の共同的…

「本音で話す」

一言で「本音で話す」といっても、じつはいろいろな仕方があるはずだ。 そして、自分にとってどうにも苦手なタイプの「本音で話す」仕方とはどのようなものか考えてみたい(いつか)。

『新しい分かり方』

佐藤雅彦『新しい分かり方』(中央公論新社)を入手し、家族で一緒に読んだ。sense-makingするために私たちの使っているいろんな方法――本当に色々だ――を、ページを繰りながら実際に手に取るように確認することができる。たとえばこんな感じ。あるページには…

language, not belief

I have wanted, in the foregoing discussion, to distinguish between the beliefs people hold and the language in which those beliefs are expressed and which makes them possible. And I have tried to undermine the seductive idea that the gramm…

概念についての問い(信念についての問いではなく)

もしわれわれが、アザンデ族が信じている事柄という観点で彼らの妖術制度について考えるとすれば、「では、彼らが信じていることは真なのか偽なのか」という問いを招いてしまうと思われる。私はここで、この問いを招くと思われると述べた。それは実際問題、…

Comment

ある人物が「妖術師などいない」と述べるのに対し、私が1964年の論文「未開社会の理解」においてこれに反対したとき、私はあのような主張を否定していたのではない。「いや、実際妖術師はいる」などと言っていたのではない。つまり、私がザンデの信念を「是…

道徳から見た行為者とその行為

この論点〔道徳が行為者の選択とその理由づけだけにではなく、それがなされる状況しかも行為者から見られた状況に関わっているという論点〕を表現するために、状況、状況が提起する問題、そしてその問題を論じるのに適しいタイプの理由、これらは或る何らか…

やろうと努めること

私の主要な論点を一般的にまとめて結論としよう。悪いことを行えば人は悪いものになる(キリストの言葉で言えば、人は「けがされる」)。このようにして人が何になるかは、人が入り込んでいる他人との複雑な関係の網の目と切り離すことができない。この網の…

「人間の本性」という問い

人間の本性という概念は、通常は何らかの形の「相対主義」に関連して、社会諸科学の本性や射程をめぐる議論のなかに登場する。時と場所が異なれば人間生活の諸現象には非常に多くの、しかも明らかに排他的な多様性がある、ということに直面すると、我々は、…

「施設で生きるということ」

有薗真代, 2016, 「施設で生きるということ――施設生活者の戦後史からみえるもの」『世界』887, 49-55. 障害者の施設生活をめぐる既存の価値観、言い換えれば、施設を否定し、脱施設化・地域生活を肯定するという二項対立的な見方に対し、本論は問題提起を行…

『精神病と統合失調症の新しい理解』

Cooke, A., ed., 2014, Understanding Psychosis and Schizophrenia, British Psychological Society(国重浩一・バーナード紫訳, 2016, 『精神病と統合失調症の新しい理解:地域ケアとリカバリーを支える心理学』北大路書房) 精神病者への支援のあり方を、…

二つの学会報告についてのメモ

2016年7月2日より7月14日まで、ヨーロッパの3都市を訪れた。 目的は二つの学会報告で、これについては下に記す。ちなみにこの二つの学会の合間に少し時間があるのでマンチェスターを訪れ、エスノメソドロジーという研究領域において高名な研究者に研究上の助…

ウィンチェンシュタイン?

Dupré, John., 2016, Social Sicence: City Center or Leaft suburb, Philosophy of the Social Scienes, 1-17. DOI: 10.1177/0048393116649713 ウィトゲンシュタインに依拠した社会科学論――その中心にはP. ウィンチのそれがある――について、批判的立場を示…

『概念分析の社会学2 実践の社会的論理』

『概念分析の社会学2 実践の社会的論理』という論文集が刊行されることになりました(4月12日の時点では、紀伊國屋書店新宿本店にて限定的に販売しています)。多様な実践を対象に、それぞれの固有性を構成している概念連関を記述することを目指した論文集で…

「普通の人生」

Atkinson, M., 1980, "Some practical uses of "a natural lifetime," Human Studies, 3, 33-46. 【目的】この論文の目的は、「普通の人生」とか「自然な人生」といったものについての概念について、それがどのようなときにどのように用いられているかを、明…

フーコーとハッキング:実践の可能性条件としての概念空間の探究

これもまた、前エントリーの内容と同様、あるリーフレットの読書案内として書いたものです。フーコーについては何度読んでもわからないにもかかわらず紹介している点が情けないのですが、やはり記録としてそのまま掲示しておきます。 * 私たちが何者として…

精神障害

少し前に、あるリーフレットに記した読書案内です。内容が普通すぎるので案内としてあまり役立たないという反省もありますが、記録として掲示しておきます(ただし、一部の誤植を改めました)。 * 精神障害というと 私たちは、まずはそれを持つとされる個人…

社会性・社交性・ソーシャリティ

社会性があるとか、そうした能力がないといった判断基準は、どこにあるのか? その判断は、個体と個体の出会う仕方にもとづいておこなわれるはずだろう。つまりそうした判断は、具体的な状況における関わりの仕方についてのものであるはずである。そしてその…

ある会議にて

昨日、ある研究プロジェクトの全体会議に参加した。この分野でもっとも進んでいると思われる方々の様々な研究報告を、うかがった。開発中の技術や進行中の実験のアイデアを聞き、登壇者のみなさんの旺盛な探求心に感服した。 しかし基礎的な概念についてのビ…

Hacking, 2015

Hacking, Ian, 2015, "On the ration of science to activism in the shaping of autism," Kendler, K. S. & J. Parnas, eds., Philosophical Issues in Psychiatry III: The Nature and Sources of Historical Change, Oxford U. P., 326-339. この論文でハ…

治療契約:治療者と親との

Schopler, E., 1978, "Changing parental involvement in behavioral treatment," in Rutter, M. & E. Schopler, eds., Autism: A Reappraisal of Concepts and Treatment, Plenum Press (=丸井文男監訳『自閉症――その概念と治療に関する再検討』黎明書房, …

共同治療者としての両親

Kanner, L., 1971, "Follow-up study of eleven autistic children," Journal of Autism and childhood Schizophrenia, 1(2), 119-45(=1978, 十亀史郎ほか訳「1943年に最初に報告された11名の自閉症児童に関する追跡調査研究」『幼児自閉症の研究』黎明書房…

参加の構造としての物語

Goodwin, M. H., 1990, "Stories as participation structures," He-Said-She-Said, Indiana U. P., 239-257. 物語を、それが語られる相互行為における/としての/に対する対象として、検討する。言い換えるならば、物語は、相互行為への参加者がその相互行…

ドブジャンスキーの人種概念について

拙稿(「類型から集団へ――人種をめぐる社会と科学」酒井・浦野・前田・中村(編)『概念分析の社会学』ナカニシヤ出版, 10-40)において、Th. ドブジャンスキーをとりあげ、彼の生物学的(遺伝学的)人種概念について分析したことについて、「科学史」的に妥…

Constructing Autism

Nadesan, M. H., 2005, Constructing Autism: Unravelling the 'truth' and understanding the social, Routledge. 自閉症の概念と自閉症者の存在について、20世紀西洋の歴史的社会のなかにその成立の可能性を見いだしていく研究。 題名からは、自閉症がもっ…

精神障害の症候の論理的地位

Marková, I. S. and German E. Berrios, 2009, "Epistemology of mental symptoms," Psychopathology, 42, 343-349. 精神障害の症候とされるものの論理的地位の検討。 その概念が、症候とされる行動が現れる社会的なコンテクストや、患者の持つ障害や生活と…

診断概念の妥当性と有用性

Kendell, R. and Jablensky, A., 2003, "Ditinguishing between the validity and utility of psychiatric diagnosis," American Journal of Psychiatry, 160(1), 4-12. 様々な精神障害は自然な種類(natural kinds)なのか否か。またそうでなかったら、精神…

概念の操作的定義と操作的診断基準

佐藤裕史, German E. Berrios, 2001「操作的診断基準の概念史」『精神医学』43(7), 704-713. 精神医学における操作的診断基準の導入の経緯とその問題をまとめている。 精神医学において操作的診断基準が発表されたのは、1972年のJ. P. フェイナーらの論文で…

模倣と内面化

Hacking, I., 2010, "Pathological withdrawl of refugee children seeking asylum in Sweden," Studies in History and philosophy of Biological and Biomedical Sciences, 41, 309-17. おもにスウェーデンを中心に2001年以降に発生した、難民の子どもたち…