Brigitte Jordan 1993

Birth in Four Culture, 4th edition, Waveland Press.=2001宮崎清孝他訳『助産文化人類学日本看護協会出版会。
 著者は出産過程を、生物的かつ社会的な過程としてみる視点から見る。それにもとづき、出産がどう文化的に定義され、それがどのような社会的環境(人間関係・場所・制度・道具)のなかに位置づけられ、どのような形をとるのかが、おもにユカタンでの事例と合衆国での事例比較を通じて、明らかにされている。
 そしてこうした研究の背後にあるのは、第一に出産過程に関わる医学的テクノロジー第三世界諸国に輸出されることにともなう混乱(植民地化)を問題化していく視点であり、第二にそうした出産の医療化じたいがもたらせている出産当事者(女性)の経験の植民地化を問題化していく視点である。
 興味深かった点は次。(1)分娩に関わる道具と社会関係や分娩の参与枠組みの編成、知識の非対称性、意思決定権の所在という主題が、具体的な事例についてのエスノメソドロジー的分析を通じて相互に関連づけられている点が明確化されている。(2)そしてこの点がうまくいっているゆえに、彼女のより大きな問題認識が浮いたものとなっていず、翻ってまた(1)の詳細な分析に意義を与えていること。
 今後自分としても分析していってみたい点としては、(1)ラマーズ呼吸法が分娩場面において果たしている役割についての分析??これを筆者は、妊婦の自己コントロール獲得手段としてではなく、自己コントロールがとれているか否かの判断基準として用いていると分析している(195頁)。(2)産痛についての、相異なった知識の関係づけ(抑圧?)という論点(197頁)。(3)学習方法の2つのモードについての論点(第7章)が、助産師による妊産褥婦への指導(外来・授乳指導)などに、どこまで適用できるかという点。

助産の文化人類学

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