Levi-Strauss, C., [1971]1983=1986

  • Levi-Strauss, C., [1971]1983, "Race et culture," Le regard eloigne, plon =1986, 三保元(訳)「人種と文化」『はるかなる視線 I 』みすず書房, 2-35.

「多様性とアイデンティティを」という、そこに含まれている二律背反にもかかわらずそれを丸め込むようなレトリックで人種主義批判を続けるユネスコの基本方針に対して、それが独自の集団を人類へと引きずり込む動きへの荷担にもなりうるということを、批判的に論じた論文。
こうした批判に至る途上で、この論文では、文化的進化から遺伝的進化への作用について論じている。たとえば、移住や婚姻規則、農業などが、集団の遺伝的特徴に対して長期的におよぼす作用について。そのうえでユネスコの基本方針自体がそのひとつとなっている工業文明が、各集団で独自におこなわれていたこうした作用の可能性を奪っていくのであると。そしてこれが、人種偏見という表面的問題の影に隠れた、真の問題であると指摘することで、この論文は結ばれている。
この論文も、新人種主義とのかかわりでバリバールらによって批判的に言及されているが、まずはユネスコへの批判という文脈で捉えておく必要があると思う。