病状の分類と発明の、二つのベクトル

  • Hacking, I., 1982, "Biopower and the avalanche of printed numbers," Humanities in Society, 5, 279-295. =2012, 岡澤康浩訳「生権力と印刷された数字の雪崩」『思想』1057, 76-101.

30年ほど前に書かれたハッキングの論文。この後、ハッキングは1990年にThe Taming of the Chance (Cambridge University Press)を、そして1995年にRewriting the Soul (Princeton University Press)を出版することになる。
個人的なことを言えば、いずれの著書(そしてそれらの元になった論考)をもとても興味深く読んできた。とはいえ、両者がどのように結びついているのかについては、本人の言葉によってはあまり明確にされたものを見ることができなかったので、漠然と推測するにとどまっていた。
他方、このような結びつきについて、この論文はその最終段落においてとても明瞭に表現している。

病状の分類という発明には二つのベクトルがある。本論文では、そのうちの一つを強調した。すなわち、「数え上げることへのフェティシズム」である。このフェティシズムは、数え上げることを目的とした、容易に適用可能なカテゴリーを必要とした。もう一つのベクトルとはもちろん、個々の専門家――例えば医者――が個々の患者の身体に対面した際に〔行う〕理論的かつ実践的推論である。

ちなみにこの点については、訳者解説においてもはっきりと述べられていて勉強になる。ご恵投いただきました。