やろうと努めること

私の主要な論点を一般的にまとめて結論としよう。悪いことを行えば人は悪いものになる(キリストの言葉で言えば、人は「けがされる」)。このようにして人が何になるかは、人が入り込んでいる他人との複雑な関係の網の目と切り離すことができない。この網の目が、それ以後の当人の人生に対する道徳的評価として何を語れば理解可能であり、何を語れば理解不可能となるか、その限界を課している。悪いことを行おうと努めながらも失敗するとすれば、人は成功した場合になるようなものにはならず、それによってその人に対する道徳的評価の可能性も違ったものとなる。

  • Winch, P. 1972, "Trying," Ethics and Action, Rutledge & Kegan Paul.(=1987, 奥・松本訳「やろうと努めること」『倫理と行為』勁草書房, 207-8頁.)